「宿屋よりも道中のほうがよい」(by セルバンテス)
辛い思いを道づれにした旅ならばなおさらである。
休まずにゆきつづけられたら、どれほどいいだろうか。
空きのベッドがないと言った宿の主人がありがたかった。
自分の気持ちに驚くほどに、ありがたかった。
行こう。今日はまだ行けと誰かが言っている。
野宿する余白のない道である。
とぼとぼと行く俺自身ががまったく余白的だ。
どこへ行っても誰かがいて余白がない。
山に惹かれるのは、そこが余白だと思うからかもしれない。
けれど、いまや山にも人があふれている。
余白のような山に惹かれても、何故か今は行けない。
「眠れぬ人のなんと多いことか。彼らに寝床をあたえよ」(by 種田山頭火)
疲れきった体に今日の寝床がある。
大きな荷物を背負った怪しい人間(俺のことだ)にも与えられた。
ありがたい。実にありがたいことだ。
だのに、眠れない心はどうしたことだろう。欲深な心め。